絵を描いたり、詩を書いたりする事を得意として、多彩な才能を秘めていた18才のユッコは、1986年の年明けから亡くなる数日前までの4ヶ月間、女流小説家としてオリジナル短編小説・三作品を書き残しました。

ロマンチストで恋に憧れる夢を抱きながらユッコは、ラジオDJを共にした友達をモデルにしています。

ユッコは三作品の小説を書きながら、モデルにした友達の持つ精神の逞しさの中に自分自身を投影していたのかも知れません…。

創作エピソードと三作品を紹介します。






コ−ヒ−・マグを片手にユッコがふっと呟いた。

「小説を書きたいなぁ」

1985年12月
TVドラマの取材を終えて、次の仕事場へ向かう迄の短い時間の中で雑談している時の事だった。

「小説って、どんなスト−リー?」

少し困った表情で宙を眺めた後にユッコはポツリと語り始めた。

「冒険物でもいいし、探偵小説も書いてみたい。それから…」

「それから?」

「え−とラブ・ロマンスもね」

照れ臭ささを誤魔化す様にユッコは、わざと大袈裟な身振りで言葉を繋いだ。

「子供の頃から物語を書くのが夢だったの。
傑作が出来たら映画化して自分で主役を演じるのね。素敵でしょ」


ユッコは目を輝かせる。

「主人公は女子高生。とっても気が強くて、それでいて心優しい子。私の理想の女性ね」

ほどなくしてユッコの小説作りが開始する。

一作ごとにユッコとどんなスト−リーにするかをその都度打ち合わせる。

1作目の打ち合わせが行われたのは1986年11月
待ち合わせの喫茶店にやって来たユッコは大張り切りだった。

「最初はね、主人公の女の子がヘンテコな事件に巻き込まれちゃうドタバタコメディ−にしようと思うの。
名前は、「小織里」にしようと思うの。
私の親友の名前だし可愛い響きでしょ」


ユッコのプランをそのまま受け入れて執筆を依頼した。

第一作品『トマトケチャップは犯罪の色』の原稿を受け取ったのは、約束通り10日後だった。
忙しいスケジュールの中で書いた割りに申し分ない出来だった。

作品は早速、3月発売の「中一時代」4月号にて発表された。

1986年2月上旬。
2作目の打ち合わせ。

「今度はユッコ本人も登場出来る様にTV局での事件にしては?」と提案。

「面白そう!!」とユッコは頷いた。

「主人公の小織里がタレントにならないか?ってスカウトされる粗筋にしょうかな…?」

「面白い!」

編集スタッフも膝を叩いた。

「やっぱりアイドルが誘拐事件に巻き込まれるっていうのが面白そうだなぁ。
ねッ!いいでしょ?」


それからユッコは、あ−でもない。こ−でもないと物語を練り始めた。

打ち合わせの度に感じた事は、ユッコがスト−リーを心から楽しんでいるという事。
また原稿を書くの事がそれほど苦にならないようだし、筆の進み具合も早かった。

最後の作品『悲しきキュ−ピット』の打ち合わせは、3月の半ばだった。

この日、ユッコは一人暮らしを控えて家具店の中を5時間近くも買い物に歩き回った後だった。

「何を買ったの?」とスタッフが尋ねる。

「ベッドやタンスそれとフロア−スタンドも」と、ユッコの声がいつもより弾んでいた。

「三作目はラブ・ロマンスでいかない?」とスタッフが提案した。

「えっ?」とユッコは、ちょっと考え込んでから出し抜けに…

「私、お見合いに憧れてるんです。
一度やってみたいな」


物語の内容を話し合いながら、話題は結婚談議に脱線した。

時折、ユッコは、黙り込んで誰もいない椅子をじっと見つめている事があった。

「疲れてるんだな」とスタッフは気にしなかった。

3作目の原稿が届いて数日後、突然ユッコは逝ってしまった。

作品モデルとなった「青木小織里」さんのコメント

私の大好きなユッコちゃんへ…

突然の出来事で私は今だに信じられません。

ユッコちゃんの愛くるしい笑顔が脳裏に焼き付いて、今にも私の目の前に現れる様な気がしてなりません。

優しくて可愛かったユッコちゃん。
あなたとの出会いは、サンミュージックのレッスンでしたね。
『奈美子有希子小織里のドキドキ・ラジオ』の番組を一緒に担当する事になり直ぐに仲良しになりました。

銀座で洋服を買ったり、アイスを食べたり。
「色気より食い気よね」なんて、少しも気取らなかった。

いつだったか、夕方にお菓子を食べながら、奈美子ちゃんを交えて3人で湘南電車に乗り、夜の江ノ島へ行った事がありましたね。
砂浜を駆けながら、「いつか三人で旅行に行こう」って私達は約束をしたのに…・。

チャオは思います。
ユッコちゃんは、きっと天国の色とりどりのポピ−が咲いている花園で淡いピンクのドレスを着て、白いブランコに揺られながら大好きな歌を口ずさんだり、絵を描いているのでしょう。

そして、優しく微笑みながら、「奈美ちゃん頑張って!」って、呼び掛けてくれている様な気がします。

大好きなユッコちゃん。
いつまでもチャオの素敵なお姉さんでい続けて下さい。
そして、どうか安らかにお眠り下さい。

青木小織里




トマトケチャップは犯罪の色
【中一時代 4月号】掲載


【中一時代 5月号】掲載


悲しきキュ−ピット
【中一時代 5月号】掲載




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